ゲンジツ

※今更『ユメオチ』の続き。

 朝、「おー」とお互い普段通りに挨拶をしたのだが、今日はサイコーの目の下のクマがいつもよりひどい。自転車を力なく押して家を出てくる姿は、自転車を押していると言うよりは自転車に支えられているように見える。寝ていないのだろうか……。
 サイコーが寝ていないときはだいたい絵の練習とか、絵の練習とか、あと……絵の練習とか、が原因なので、俺も今更口に出して原因は聞かない。が、それにしてもいつもと違う。少し憔悴してるようだが、体力的にと言うよりは精神的に参っているような……。
「なぁ、大丈夫か? フラフラしてるぞ」
 サイコーは俺を一瞥すると、すぐに視線を逸らして「あぁ」と返事をした。体調も悪ければ機嫌も悪いのか、今日は俺の顔も見てくれない。……寂しい。俺の寂しさは置いておくとしても、サイコーの身体は心配だ。フラフラと自転車に乗ってこぎ出したので後を追うが、運転の仕方もどうにも不安定でグラグラしていて、土手から落ちそうなくらいだ。本当に大丈夫なのだろうか。再び声をかけても、声だけの返事は返ってきたもののやっぱりこっちを見てはくれなかった。

 サイコーは1限目は起きていたようだが、2限目からは寝始めた。俺は4限だけ寝たが、サイコーは2限から4限までぶっ通しで寝ていた。調子が悪いなら保健室に行けば良いと何度か勧めたが、やはりこちらを見ずに拒否された。そのうち昼休みになり、俺とサイコーはコンビ二で適当に買ったものを持って屋上に出たが、やはりサイコーの調子は相変わらずだ。階段を昇る足取りも不安だったし、何より憔悴が濃くなっている気がする。
 日陰に座り俺の隣で適当にパンを頬張るサイコーは、いつも通りと言えばいつも通りだ。顔色を除けば。体調が悪いのであれば熱もあるかも知れない。そう思った俺は、ひたりと手のひらを自分の額とサイコーの額に当てた。その瞬間、サイコーの身体が大きくびくりと反応し、勢いよく手を跳ね除けられた。パシッと乾いた音がして俺の手が叩き落される。何が起きたのか一瞬理解できなかったが、じわじわと滲むように現状を脳が理解していく。
「! ……わ、わり……驚いて」
 申し訳なさそうに謝るサイコーは、やはり俺の顔を見てくれなかった。気にするなと笑ってみせても、自分の中の不安は広がっていくばかりだった。もしかして俺はサイコーに何かしてしまったのだろうか。サイコーの憔悴の原因が俺にあるのだとしたら……。傷口を突付くような気持ちだ。でももし原因が俺にあるのであれば、ここまでサイコーを憔悴させてしまったのが俺なのであれば、傷口に針を刺して膿を出すべきだ。俺は覚悟を決めて、相変わらずこちらを見ないサイコーに話しかけた。
「な、なぁ……俺、もしかして何かしたか?」
「……何で」
 サイコーは俺を見ないまま、不機嫌そうに缶コーヒーを飲んでいる。少し泣きそうになった。
「お、俺の方全然見てくれないし……サイコーが今日調子悪そうなのも俺のせい、なのかなって……」
「………………それとは関係ない」
  やっぱり関係あるんだ……。こう言う煮え切らない答え方をする時は、大抵そうなのだ。サイコーは俺と違って嘘を吐くのがあまり上手くはない。俺だって伊達にずっと人間観察をしていないし、上手くもない嘘くらいは見抜けられるつもりだ。だからつまり……、そう言うことなのだ。俺がサイコーを憔悴させてしまうほどの何かをしてしまったのだ。情けないことに心当たりが全くない。また泣きそうになった。大事な相方に負担を強いておいて、当の本人が自覚なしだなんて最低だ。
「なぁ、やっぱり俺だろ? サイコーをそこまで悩ませたのって。ごめんな、ホントごめん」
「違うって……」
「でも俺全然心当たりなくて……自分でも最低で嫌になるんだけど、何が悪かったか言ってくんねーかな」
「だから違うって……」
「そんなに寝られないくらい悩ませちまったなんて、俺ダメだな……。気に入らない所あったら言ってくれよ、俺直すから」
「だから違うって言ってんだろ!!」
  ガツ! とコーヒー缶がコンクリに叩き付けられた。スチールで出来ている缶の底の縁が、歪な形に凹んでいる。中身はもうなかったようだが、残っていたらきっと衝撃で殆ど零れてしまったと思う。それくらい強く叩き付けられたのだ。コーヒー缶を叩き付けた瞬間サイコーは強い視線で俺を見たが、すぐに視線を外すと小さく「悪い」と呟いた。俺は返事が出来ず、気まずい空気が流れる。その空気に耐えかねたのか、サイコーは底が潰れた缶を持って立ち上がり屋上を去ろうとした。
「……体調悪いから早退するわ」
 それだけ言うと、重い鉄の扉を開けて屋上を出て行ってしまった。俺は謝る余地さえ貰えなかったのだ。何でだろう、何をしたんだろう。何をそこまでサイコーに悩ませてしまったんだろう。じわりと涙が滲んだ。

  昼休みが終わる前にサイコーは早退した。残された俺は午後の授業の最中ずっと寝ていた。いや、寝ている振りをしていた。考えるのはサイコーのことばかりで全然眠れない。思い当たる節をどれだけ探しても、それらしいものが見当たらないのだ。もしかして原因は「出来事」ではなくて、俺のネームのせいとかだったらどうしよう……そんなにダメなネームなのだろうか、でもサイコーもアレで良いって……。それとも俺の人格的な部分で何か……どうしよう、どうすれば良いんだろう……。
 ぐるぐると思考の泥沼に沈んでいる間に、いつの間にか全ての授業が終わったらしい。ガヤガヤと騒がしくなる周囲に、俺だけぽつんと取り残されている。ここにいても仕方ないし、帰ろう……。そう思って気だるくバッグを取り出すと、騒がしく見吉が教室に入ってきた。
「あれ? 真城は?」
「ああ……体調悪くて早退」
「えっ、そうなんだ。心配だねー」
 心配、だけどそれ以前に原因が……。俺はもう何度目なのか数える気にならない溜息を吐いた。
「高木もどっか悪そうだけど。て言うか何で落ち込んでんの?」
「……何でもねーよ」
「ふぅん。ねぇ早退したんなら家にいるでしょ、お見舞い行けば?」
 見舞い……。
 俺のせいで体調崩してるのに、見舞いなんて行けるはずがない。だるい足取りで見吉と校舎を出ながら、またぐるぐると考え始めていた。その陰鬱とした雰囲気に見吉が気付かないはずもなく、しつこく問い詰められついに口を割ってしまった。
「サイコーの体調不良、俺のせいかも……」
 改めて言葉にすると自分に返ってくるダメージがでかい。
「何で? 何したの?」
「わかんねー……わかんねーけどサイコーの態度見てるとわかる。俺のせい」
「高木は謝ったの? 謝ったなら良くない?」
「あんま、そう言う問題じゃなさそうで……」
 また溜息。会話がなくなるとまたぐるぐると考え始めてしまう。気を抜くと涙が滲んできそうだから顔を上げてやり過ごしていたのに、見吉が強く俺の背中を叩いたので思わず咳き込んでしまった。
「おまえ少し加減しろよ! いってーなぁ……」
「もー何ぐじぐじしてんのよ! お見舞いに行ってとことん話してくれば良いじゃない」
「う、で、でも」
 目も合わせてくれないし……と言おうとして、口を噤んだ。さすがに自分で口に出すには情けないし、何より更に凹んでしまいそうだ。ヤバイ、また泣きそうになって来た。見吉はイライラしたように、また俺を小突いた。
「男らしくないわねー……喧嘩別れしたくないでしょ? 一緒に漫画家になるんでしょ?」
 それはそうだけど、確かに漫画のことはもっともだけど、多分俺の中にはサイコーに嫌われたくないって言う気持ちがある。俺の根の部分に、そう言う少し女々しい気持ちがあるのは認めざるを得ない。
 少し考えて、制服のポケットから携帯を取り出す。サイコーからのメールも着信もない。俺は散漫な手付きでメールを打ち始めた。見吉は不思議そうに俺を見ていたが、何も言わずに静かに見ていた。短い文章を打ち終えると、一呼吸置いてサイコーに送信する。
[体調大丈夫か? 今どこ? 家にいる?]
  時間を置かずに返事が来た。サイコーにしては早い返事だ。返事が来ないことを覚悟していたので、着信音が鳴った時は心臓が跳ねてしまった。恐る恐る受信メールフォルダを開いて文面を見る。
[そんなに悪くない。家は親がいて面倒だから仕事場にいる]
 仕事場なら近いし、話をするにも好都合だ。今度はしっかりとした手付きでメールを打つ。メールを打っているだけなのに、変に緊張して喉が渇いてしまう。何度か唾を飲み込んだ。2・3度深呼吸をして自分を落ち着かせ、覚悟を決めてからメールを送信した。
[見舞いに行っていい?]
  5分、10分、待つ。返事は来ない。駐輪場で見吉と一緒に返事を待っていたが、ずっとここで待っていても仕方がないし、とりあえず学校を出ようと思った。帰ろうと言うと見吉は何か言いたそうな顔をしていたが、それに気付かない振りをして自転車を引っ張り出す。サドルに跨って学校の敷地を出たところで、ポケットの中の携帯が鳴った。ブレーキをかけて慌てて携帯を取り出した。サイコーだ。俺の表情から誰からのメールかわかったのか、見吉も固唾を呑んで俺を見ている。恐る恐るメールを見ると、そこにはそっけなく一文だけ打ち込んであった。
[いいよ]
 そっけないが、紛れもない許可の言葉だ。
「み、見舞い行って良いって」
「やったじゃん!」
  道のど真ん中で騒ぐ見吉をそのままに、俺は込み上げる嬉しさを抑えきれないでいた。とにかく許可は得たのだ。原因を教えてもらえるかどうか、サイコーに許してもらえるかは別として、とにかく話して謝ろう。そしてこんな状態が続くのは嫌で、サイコーに嫌われるのも嫌で、これからもずっと一緒にやっていきたいと言うことを伝えて、そのためにはどうすればいいかを話そう。やっぱり話さないと何も始まらないし解決しない。背を押してくれた見吉に感謝して、俺はテンションを上げた。
「よし、じゃあ見舞い行こうぜ!」
「何言ってんの? 私行かないわよ」
「……え?」
「私だって空気くらい読めるんだから。喧嘩の仲直り現場に邪魔なんてしないわよ」
 「じゃあ頑張ってねー!」と言いながら颯爽と自転車で去る見吉を見送りながら、自分の周りの温度が一気に下がった気分になった。……どうしよう。

 

 


 


 携帯をパタリと閉じた。メールを打つことはほんの数秒で済んでも、そのたった3文字を打つために何度葛藤を繰り返したことか。
 ……今からシュージンが来る。
  今日ほど自分の席がシュージンの前で良かったと思ったことはない。登校する時ですら目も合わせられず、シュージンの方を見ないようにしていたのに、後姿とは言え常に見える場所にいられたら居たたまれなかったに違いない。だからと言って、前の席だから良かったと言う事もなかった。授業中はずっと寝ていたけど、寝ていた振りをしていただけで全く眠れない。いや、眠れないんじゃない。目を閉じると今朝の生々しい夢が、まぶたの裏に映画のスクリーンのように映るのだ。起きていれば悶々と考えてしまい、眠って現実逃避をすることも許されない。元々真面目に受けるつもりもないけど、授業の内容なんか全然頭に入って来ない。針の筵だ。どうしようもなかった。それに僕を心配するシュージンを、とてもうっとおしく感じた。そして適当にあしらった後に困った顔をするシュージンに内心僕が困ってしまうのだ。そのうちシュージンはいつもの悪い癖を発揮して、自己完結した的外れな結論を出した。
 ……今日の僕は最悪だ。自己嫌悪はいつの間にか八つ当たりの形になって、それはシュージンに向いていた。泣きそうな顔が頭から離れない。夢の中でも泣きそうな顔だった。原因は全く違うけど……。それを思い出してまた自己嫌悪に陥る。
 頭では必死に否定していても、夢は深層心理の表れというのは本当なんだと思った。自覚をしながら何度も何度も、シュージンの事は友達として好きなのだと自分を誤魔化して来たが、あんな夢をみてしまった後ではもう否定なんか出来ない。溜息を吐いた。
 僕はシュージンが好きなのだ。女子を見る目でシュージンを見ているのだ。どこでこんな風になってしまったんだろう。初めて原稿を上げた時か、一度コンビを解散した時か、それとも……思い当たる節が多過ぎる。不毛だ。原因を探るのはやめよう。
 仕事場の定位置の椅子に座り、机にべたりと寝そべる。とても消耗していると感じた。それは1日ずっと悶々としていたせいなのか、朝から処理のために抜いてしまったせいか、シュージンで抜いてしまった罪悪感のせいか、どれだろう。……全部かも。そして今からシュージンが見舞いと称して今から来るのだ。本当は来て欲しくなかったが、どうせ見吉と来るだろうしその方が僕も落ち着けると言うものだ。カレシカノジョの仲の2人を見れば諦めも付く。そうだ諦めるんだ。僕にだって亜豆がいるんだから諦めるも何もないんだけど、「諦める」しかしっくり来る言葉がない。別に亜豆が嫌いとか興味がなくなった訳でもなくて、亜豆も好きだけどシュージンも好きで、最悪な言い方をするなら「別腹」と言うやつかもしれない。
  浮気をする男の気持ちってこう言うものなんだろうか。これは浮気なんだろうか。いやどっちも本気だ。でもこれは一般的に浮気以外の何者でもない。ああもう自分で自分がわからない。気持ち悪い。どうしたら良いんだ。どうして良いかわからない。
 頭を抱えて1人で唸っていると、玄関を空ける音がした。……来た。来てしまった。いや落ち着け。見吉も一緒のはずだ。僕はいつも通りにしていればいいんだ。そして明日から、いや明日は無理かも……明後日からいつも通りの僕に戻る。いつも通りの、亜城木夢叶の作画担当。一緒に漫画家を目指している、シュージンの相方であるいつも通りの真城最高に。

 仕事場の扉がコツコツとノックされた。いつもはノックなんかしないくせに、今日は気遣っているらしい。シュージンは僕の身体の具合が悪いと思っているからだろう。それが申し訳なく思えた。顔を上げながら適当に返事を返して、シュージン達を招き入れた。
「具合どうだ?」
 シュージンは見舞いだと言ってコンビ二の袋に入った飲み物や、ゼリーなどを僕によこした。本当に病人だと思っているのか、その気遣いが痛い……。見吉はまだ玄関にいるのだろうか。まだ仕事場には入って来ていない。
「が、学校にいるよりは良い」
「そっか、良かった!」
  嘘でもないが本当でもない答えを渡すと、心底ほっとしたようにシュージンの顔が綻んだ。良心が痛む……。こんなに僕のことを心配してるのに、僕は昨晩夢の中でシュージンの身体を好き勝手に弄っていたのだ。居たたまれない……逃げたい。見吉早く来てくれ。そうすればシュージンの意識も見吉に向く。そして仲良く「お大事に」とでも言って、さっさと帰ってくれればいいのだ。しかし待っても待っても見吉が現れる気配がない。何してるんだ……早く来いってば……。
「見吉は? 一緒なんだろ?」
「あ、見吉帰った」
「はぁ!?」
  と言うことは、今仕事場には僕とシュージンの2人だけと言うことじゃないか。見吉も来ると思ったから来ていいって返事したのに、見吉が来ないんじゃ逆効果だ。せっかくシュージンを視界に入れないように、2人きりになるのを避けていたのに。どうやってこの場をやり過ごそう。ここでシュージンに「もう帰れ」と言うのは簡単だ。シュージンも戸惑いながらも応じるだろう。でもそれで犠牲になるのは僕達の関係だ。きっともっと気まずくなる。それだけは避けたい。仲違いをしたい訳じゃない。
 僕はただ、胸の中からじわじわ染み出てくるようなこの感情を抹消したいだけなのだ。そのためにはシュージンとは少し離れていたい。離れていれば、きっとこの染みのような感情も落ち着く。そして消えてくれる。だから今は一緒にいたくない。でもそれを言うのも嫌だと気持ちが訴えている。気持ちのどこかで一緒にいたいと思ってると言うことも、頭の隅ではわかってる。あぁ、感情って何でこんなに面倒なんだ。
 僕が黙り込んでいると、シュージンがソファに座る気配がした。ソファが少し軋んで、シュージンの体重を受け止める。しばらく2人で黙っていたが、やがてシュージンの口が開いた。
「あ、あのさ……身体、辛くなければで良いんだけど、サイコーに聞きたい、ことが」
 その言葉にびくりと肩が揺れたが、何もない振りをしてシュージンから視線を逸らした。視界の端でシュージンが困った顔をしている。本当はそんな顔をさせたい訳じゃない。顔は見れなかったけど、ぶっきらぼうに返事だけは返した。
「……何?」
 盗み見るように視線を向けた先でシュージンは2・3度瞬きをすると、意を決したように口を開いた。
「俺の嫌なところ言ってくれ!」
「……は?」
「だから、俺の嫌なところ言ってくれ! 直すから」
「何だそれ? そんなこと突然言われても……」
  シュージンは緊張しているのか、背中をピシッと伸ばして僕を見ている。眼鏡の向こうの目がマジだ。何を聞かれるのかと思ったら、想定外の質問で面食らってしまった。いや、想定外でもないか……これは屋上の続きだ。あの時は自己嫌悪と、勝手に原因を背負ったシュージンへの苛立ちが募ってしまいあんな態度を取ってしまった。今はあの時よりは落ち着いている。きっとシュージンもそうだ。でも原因を背負ったままなのは変わってない。
 原因は僕だ、シュージンじゃない。でもその原因を口に出すことは、僕の気持ちを打ち明けると共に今朝の醜態を晒すことに繋がる。それだけは避けたい。さすがに言えない。言ってはいけないのだ。
 目の前で姿勢を正したままのシュージンは、僕の答えを待っている。嫌なところを挙げろと言われても困る。昔だったら挙げられたかも知れないが、今となってはそんなに嫌いなところなんてない。
 そうだな……少し馴れ馴れしいところ。今はもう嫌じゃないな。犬みたいにくっ付いてくるところ……むしろ好きになった。僕に対しての笑顔が他人と違うところ、僕を第一に考えてるところ、すぐに泣くところ。……だめだ、全部好きなところだ。案外ないぞ……困った。ここで何か言わないと納得しなさそうだ。とにかく何かしら挙げて納得してもらって、それで帰ってもらわないと。じゃないと今朝の夢と、目の前のシュージンを重ねてしまってヤバイ。何とか捻り出さないと。
「シ、シュージンのっ」
「! う、うん……」
「…………背が俺より高いのが嫌だ」
  無言が部屋に満ちた。咄嗟に口から出たのがこんなバカな言葉だった。いくらなんでもバカすぎるだろう……絶対呆れられてる。嫌だと言うよりは気に入らないと言うか、シュージンを見上げる時にたまに背が低い自分を悔しく感じるくらいだ。息を呑んで僕の言葉を待っていたシュージンは、今はポカンと口を開けて呆けている。さすがにこんな答えが返って来るとは思わなかっただろう。頭が悪すぎる答えに自分で自分が恥ずかしい。なかった事にしたい。
「えーと……それは自分ではどうにも出来ないな……サイコーに伸びてもらうしか……」
「わ、わかってるよ。言ってみただけ」
 重い空気が少し軽くなったのは良かったが、問題が先送りになっただけでシュージンは全く納得していないようだ。改めて嫌なところを指摘して欲しいと言われ、僕はまた悩むことになった。むしろ今の状態が嫌なんだけど。
「シュージンの嫌なところは」
「う、うん」
「……そうやって全部自分のせいにするところだよ。あとはない」
 だから正直な気持ちを言った。これは嘘じゃない。でもシュージンは納得しなかったようだった。「そう言う事じゃなくて」とか何とか呟いている。何て言って欲しいのかは知らないけど、僕にはもうこれ以上出せる答えはない。
「今日、のは、俺の機嫌が悪かっただけ。シュージンは関係ない」
「ない筈ないだろ? 今までどれだけ機嫌悪くても、あんなに俺のこと避けてない。今だってそうだ。目も合わせてくれない……」 合わせない、じゃなくて、合わせられないのだ。いい加減察して欲しい。無理だけど……。
「なぁ、俺こんな状態が続くの嫌だ。コンビ解消してた時みたいなのはもう嫌なんだ。サイコーとはずっと一緒にやって行きたいし、俺サイコーのこと好きだから、気持ち悪いって思われるかも知れないけどサイコーに嫌われたくない。」
  好き、の言葉に心臓が跳ねた。わかってる、そんな意味で言ってるわけじゃないくらい。元々シュージンは、昔から気軽に好きだ好きだと言うやつだ。だから勘違いした見吉と岩瀬がシュージンに問い詰めたりしていた。この「好き」だって友達の「好き」だ。わかってる。それに俺もシュージンも男。そんな対象で見ているはずもない。少なくともシュージンはそうだ。わかってるんだ。だけどこんな感情を持ってしまった以上、その言葉に特別さを求めてしまう。
「……気軽に好きとか言うな。そう言うところも嫌だ」
「え? でも好きなのは好きだから」
「言うな!」
 ガタッと勢い余って椅子から立ち上がった後に、我に返った。また理不尽な八つ当たりをしそうだ。驚くシュージンの顔を見て、目を逸らすために俯いた。この感情を抱えてる限り、僕はもうシュージンの顔を見られないかもしれない。
「なぁサイコー、どうしたんだよ?」
  ソファから立ち上がって、シュージンが僕の目の前に来てしまった。鼓動が乱れるから来ないで欲しい。机だけを隔てたその距離はシュージンの気配をまざまざと感じさせ、喋れば吐息も感じてしまう。顔を見ないせいか、その吐息が昨晩の夢を思い出させる。 顔を少し、上げた。気分が悪くなったのかと、心配そうに僕を気遣うシュージンが目の前にいる。眉をハの字にして困り果てているその顔に、また心臓が跳ねる。気分が悪いわけじゃない。おまえが悪いわけじゃない。目を伏せた。
 ふと、目の前に影が差した。ひたりと暖かいものが額に触れる。シュージンが、屋上で僕に手を振り払われたことを再びしたのだ。額にはシュージンの手のひらが宛がわれている。そしてシュージンの額にも。手のひらは僕を気遣うように優しく、柔らかく触れている。顔の温度が一気に上がった気がした。たったこれだけの事なのに、鼓動のスピードがだんだん早くなってきた。身体が石のように動けなくなってしまった。
「やっぱり熱、ちょっとあるかも……ごめんな、具合悪いのに。もう学校終わったし、家帰って寝た方が……」
  そう言って僕の額から離れる手を、無意識に掴んだ。掴んだ手首は少しひやりとして、冷たくて気持ち良い。もう片方の手で手首から肘にかけて、さらりとシュージンの腕の内側をなぞった。手の中の腕がびくりと少し揺れる。シュージンの右手の中指には小さなペンだこが出来ている。僕の指に出来ているペンだこは目立つが、シュージンのそれは撫でてわかる程度だ。それを口元に運んで、唇を這わせた。冷静さを欠いた熱に浮かれたような行動、だと思う。
「サ、サイコー?」
  シュージンの焦った声がした。気持ち悪がっていないだろうか。今は怖くて顔が見られない。顔を見ないように、目を合わせないようにと今日は頑張っていたのに、今こうして触れてしまうと感情が堰を切ったかのように溢れて来てしまった。
  ダメだ、誤魔化しきれない。これは恋愛感情の「好き」以外の何者でもないと嫌でも自覚してしまった。僕はシュージンが好きなのだ。友達じゃない、そう言う意味で好きなのだ。女子を見るような目でシュージンを見ているのだ。一度溢れた感情は、コップから溢れる水のようにぼたぼたと零れ落ちていく。一度流れた水は戻すことは出来ない。そして一度抑えきれなくなった感情も、堰き止めることは出来なかった。だから言ってしまったのだ。
「俺、シュージンが」
 好きだ、とずっと閉じ込めていた言葉を、吐息と共に。

 

 


 


 ゆっくり2回まばたきをした。サイコーに撫でられている右腕はくすぐったかったが、それだけではない、何かゾクゾクとしたものを感じた気がした。きっと急に撫でられたから、感覚が驚いただけだと思う……多分。そして吐息と一緒に出た言葉に、3度目のまばたきをした。
「俺もサイコーのこと好きだぜ?」
「……そうじゃない」
  少し怒ったような声でそう言うと、サイコーが俺を見上げた。睨むように俺を見るその目は苛立っているようだった。指先に触れた唇は恋人にするようなそれを連想させたが、俺は何も言わなかった。……いや、何も言えなかった。その行動が意図するところは俺にはわからない。俺はサイコーとは親友だと思っているし、自称もしているが、この行動の意図はわからない。考えが読めない。どうしてサイコーはこんなことをするのだろう。そして言った言葉も。
 だってこのシチュエーションで思い浮かぶものと言えば、告白しかない。つまり、そう言う方向の。でも俺たちは友達で、相方で、それからどっちも男だし、彼女もいる訳だし、きっちりと筋が通った発言をするサイコーなのだから、まさか告白なんかあるわけがない。ない、のだけど――……
 そう言う冗談ではないのはサイコーの顔を見ればわかる。ここで「変な冗談言うなよ」と茶化すのは簡単だ。でも雰囲気がそれを許してくれないばかりか、それを言ってしまうとサイコーを傷付けてしまうかもしれない。……傷付ける? 何でそう思う? 俺はサイコーの言葉の真意が何であるか実はわかっているんじゃないか? でも、まさか。まさかそんなことは。急にドクドクと鼓動が早く鳴りだした。何だこれ、変だ。変だ。
 友達だから好きだと答えた自分の言葉が、何か違う意図を持った言葉に思えた。いや、さっき言った「好き」は紛れもなく友達としての「好き」だ。それは何も間違いはない。でもサイコーは、サイコーの意図は違う場所にあるのかも知れないと思うと。
「俺はそう言う意味でシュージンが……いや、忘れてくれていいから。気持ち悪いだろ、忘れろ。今すぐ忘れろ」
  消え入りそうな言葉を掻き消すように、忘れろと言う言葉を強く被せてくるサイコーが苦しそうだった。軽く頭を振り、俯いてしまう。指先に触れた唇も、手首を掴んでいた手もすぐに離した。俺の手からサイコーの温度が消えてしまった。
 忘れろと言われても聞こえてしまったものは取り消せない。そんな情念が詰め込められた言葉を忘れろと言われて忘れられるほど、俺は薄情ではないつもりだ。それに、何もなかったかのようにその言葉を聞き流せるほど大人でもなかった。だからその言葉を自分の中で反復する度に、じわじわと俺の中にその言葉は浸透して行った。冗談じゃなければ、そして俺をからかう演技でもなければ、サイコーの言葉は本気だ。本音、なのだ。
「俺……俺、サイコーのこと好きだけど……」
「……いいから忘れろ」
「でも、そう言う……」
「だから忘れろって言ってんだろ!」
「忘れねーよ!」
 塞がれた言葉を跳ね返すように、俺も声を荒げていた。感情がぞわぞわと波打つような感覚が自分の中で暴れ回っている。いくら深呼吸をしても落ち着かないし、目の前のサイコーの苦しそうな顔を見ると俺も苦しい。
「それ、冗談……とかじゃないんだろ?」
 サイコーは今度は何も言わずに視線を逸らした。無言が肯定の証だ。やはりサイコーの言葉は本音だったと言うことを知る。サイコーはそう言う意味で俺を……いつから? どうして? 聞きたいことは山ほどあった。でも今口にすべき言葉はそれじゃない。「俺、サイコーのこと好きだけど……そう言う意味じゃなくて友達の……」
「……わかってるよ。だから忘れろって言ってんの」
 もう一度静かに、でもしっかりとした口調で「忘れない」と言うと、サイコーは口を噤んだ。冷静に、慎重に言葉を選ぼうと頭をフル回転させる。でも感情がそれを許さない。感情がまだ混乱している。どう言えばいいのか、自分の感情が何なのか、わからない。感情に引きずられる。
「でも、わかんねー……」
「……何が?」
「わかんねーよ……」
 今度は俺が俯く番だった。サイコーが「シュージン?」と心配そうに声をかけてくる。
「わかんねー……だって俺、サイコーが好きなんだもん……。友達のって思ってたけど、サイコーに言われてそう言う意味でも好きなんかもって……」
「お、おい……」
「だって俺の中じゃ、サイコーは好きで当たり前なんだ……それが当たり前なんだよ、だから気持ち悪いとかないし、嫌いになるとか絶対ありえねー」
 困って、しまった。
 自分の感情にいくら問いかけても、サイコーに対して「嫌い」とか「嫌だ」とか、そう言う感情が一切出てこないのだ。だって普通男に告られたら気持ち悪いとか思うべきだし、多少なりとも引くと思う。でもそう言うものが一切ない。じゃあ俺はサイコーが好きなのかと問われると、答えは勿論イエスだ。サイコーの気持ちは逆に嬉しいとすら感じる。でもそう言う対象で見られるかと問われると、やっぱりわからない。でも、でも、ああ、やっぱりわからないのだ。
 頭で考えてもわからない、思考よりも感情が上回っているからだ。その感情に問いかけてもわからないのなら、答えなんて出ない。出ないけど、一つだけ言えることはあった。
「でも俺、サイコーになら何されても良いって思う……」
「はぁ!? おまえ意味わかってそう言うこと言ってんのかよ?」
 意味? うん、いや、うーん……。でも正直な気持ちだし、今はこれ以上言えることなんかない。そう言うとサイコーは顔を赤くして身体を硬直させてしまった。回答を間違ってしまった気がする。
 ……どうしたらいいんだろう。だから……俺の答えが白黒付かないのが良くないと思うから、どうにかして白黒付けるべきだと思う。サイコーの気持ちはわかったし俺もそれは嬉しい、でも俺がどう言う気持ちなのかがわからないと。
 ……そうだ。
「あ、あのさ、キ、キスしてみるとか。それで平気だったら俺もそう言う意味で好きなんだなーってことで……ダメか?」
 もうサイコーは何の言葉も発せないようだった。その代わり怒ったような顔でぶるぶる震えているようだ。その赤い顔は怒っているからのか、恥ずかしいからなのか、もうわからない。と言うか、俺の言葉が悪かったのかも知れない。
「いや、男同士なんて回数のうちには入らないしさ、あ、いや、別にそう言う……えーと、だから」
  サイコーは身動ぎもしない。どうしよう、怒らせただろうか。昼間とは違ったベクトルの怒らせ方をしてしまった気がする。俺としては結構いい案だと思ったんだけどな……。俺がぼんやりと考えていると、サイコーが急に俯いてしまった。と思うと低い声で何か呟いている。聞こえなかったので耳を寄せると、また急に顔を上げた。その顔が、と言うか目が、少し怖かった。目が据わっていた。
「……目ぇ閉じろ」
「え?」
「キスするから目ぇ閉じろ!」
 声を荒げられて「は、はい!」と反射的に背筋を伸ばしてしまった。直立だとしづらいかと思って、机に手を付いて顔をサイコーに寄せた。そろそろと目を閉じてそのときを待つ。
 静かに待つ間、ドクドクと自分の鼓動が高鳴っていく音を聞いた。緊張、しているのだろうか。向かいにはサイコーの気配がある。その気配が徐々に近づいて来るにつれ、鼓動のスピードも速まる。サイコーの気配が目の前にまで感じられるくらいの距離まで近づくと、息苦しさを感じた。緊張しすぎなのか、でもこれは緊張とは少し違う。鼓動は相変わらずドクドクと、いやドクドクなんて音じゃ済まない。そのスピードと音はもう限界にまで達している。
 唇に風を感じた。風、ではなくきっとサイコーの吐息だ。自分で言いだしたくせに「本当にするのか」なんてことを考えてしまった。でも、感情の奥底でどこかそれを望んでいる自分もいるとも感じている。望んでいる? サイコーとキスをしたがっている? 俺はサイコーにそう言う感情を持っていたと言うことなんだろうか。俺がサイコーに向ける感情は、そう言う意味だったんだろうか。
 やがて唇にふに、と柔らかいものが触れた。それは少し乾いていたけれど、紛れもなくサイコーの唇だ。俺は今サイコーと……そう思った途端、身体の奥から熱く込み上げるものを感じた。そしてぞわぞわとした感覚も、感情も一気に噴き出してきてしまった。
「あーー!!」
 俺は咄嗟に身を離すと、どたどたとその場を離れてソファの裏に隠れてしゃがみ込んでしまった。どうしよう、どうしよう、どうしよう。こんなことはない、なかった。どうしよう、こんな提案をした自分を殴りたい。遠くからサイコーの溜息が聞こえた。
「……やっぱり気持ち悪かっ」
「違う! 違うって、ちが、どうしよう、すげーどうしよう」
「……何が」
「超恥ずかしいんだよ! 今俺サイコーとキスしてんだーって思ったらすげー恥ずかしくて……でっ、でも」
 熱くなった顔を覆っている手を外せないまま、何とか恥ずかしさを我慢してサイコーの顔を見た。サイコーの顔も少し赤かった。でもサイコーはキスの前から赤かったから、どうなんだろう。ちょっとわからないな。
「嫌、じゃなかった。むしろ嬉しい、かも……」
「シュージン……?」
「てことは、ええと、俺もそう言う意味でサイコーが好き? なんだと思う……」
 そうか、そうなんだ。と自分の中で納得して何度も頷いた。そうか。そしてこれなら白黒付いたから、問題解決ってとこかな。いや問題とかそう言うことじゃなかったよな。俺、まだ混乱してるんだろうか。相方なのは変わらないから、これからは友達じゃなくてカレシ、か? カレシって言うのも何だか変だな……それっぽく言って恋人か? でも友達は友達だし、相方兼親友兼恋人ってことになるんだろうか。恋人?
「って俺見吉いるじゃん! サイコーも亜豆!」
「……うん」
 自分の感情に気を取られて大事なことを忘れていた。俺もサイコーも彼女持ちじゃないか。これどうするんだ、どうなるんだ。そう言えばサイコーは昔から亜豆一筋だったのに、俺にあんなこと言うし出来るなんて、2人の間に何かあったのだろうか。
「サイコー、もう亜豆好きじゃないのか?」
「いや……亜豆は好き」
「で、でもさっき俺のこともって……」
 どう言うことなんだ。いや俺もサイコーのこと言えないけど。
「亜豆は好き。……でもシュージンも好き」
「な、何だよそれ! 浮気か?」
「浮気じゃない! ……と思う。どっちも本気」
 本気、と言われて嬉しさに胸がじわりと温かくなった。ああ、俺本当にサイコーが好きなんだなあ……と再確認している場合じゃない。これは俗に言う、二股と言うやつじゃないのか。でも男と女の二股なんて……。
「シュージンは? 見吉と俺とどっちが好き?」
「え!? そっ……そんなのわかんねーよ!」
 これは本当にわからない。第一「好き」のベクトルが違うし、サイコーと見吉では好きの種類も熱も微妙に違うと思う。同じようには見られない。俺もどちらが浮気なのかと聞かれても、どちらも浮気ではないと答えるだろう。
 ……ああ、サイコーの言っていることが今わかった気がした。そうだ、どちらも浮気ではないのだ。そしてどちらも本気なのだ。でもどちらかだけではダメで、そのどちらかは選べない。サイコーは亜豆と俺、俺はサイコーと見吉。どちらも「好き」だけど、その「好き」も同じではない。見吉へは見吉への、サイコーへはサイコーへの、違った「好き」の感情がある。それは決して共有できるものではない。
 何か、複雑になって来た……と言うか、これで良いんだろうか。ダメと言われてもサイコーが好きだと自覚してしまったのだから仕方がないけど、こんなことになるとは思わなかった。複雑だ。
「じゃあさ、俺と見吉のどっちに嫌われるのがツラい?」
「え? それはサイコー」
 さっきの質問とは違って、その答えはするっと口から滑り出た。俺の答えを聞いたサイコーは何度かまばたきをすると「まぁ当然か」と呟いた。自信満々な態度はいつものことだけど、なぜだか今はしてやられた気分になった。悔しいので言い返してみた。
「サイコーはどうなんだよ。俺と亜豆、どっちに嫌われたらツラい?」
「亜豆」
  即答だった。俺の立場がない。わかってたことだけど、やっぱりサイコーにとっての1番は亜豆なんだなぁ……と再確認してしまった。そりゃそうだ、そんなことはずっと前から知ってる。漫画描くのだって亜豆と言う目標があるからだ。だから俺は絶対に亜豆にはそう言う意味では勝てないと思う。でも、それで良いと思う。俺は亜豆を好きなサイコーが好きなんだとも思うし、亜豆のことを好きじゃないサイコーはサイコーじゃないと思う。だから良いんだ。
「シュージンは俺のこと嫌いにならないんだろ?」
  ……まったくその通りだ、俺が自分で言ったことだし。俺は何も言い返せなかった。

 結局何が原因で機嫌が悪かったのかと言うことに関しては「シュージンの夢を見たから意識しすぎた」と言う言葉が返ってきた。何となく納得したような、しないような、微妙な気持ちになったことは覚えている。
 でも俺の夢ってだけであんなに意識してくれるのは、今こんな関係になったあとだと嬉しい。照れたようにそっぽを向くサイコーを見てまたキスしたいなと思ったけど、まだ恥ずかしさが残っているのでその気持ちは胸にしまっておいた。

 

 

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視点変わりすぎて読みにくいかな!読みにくーい![亜豆⇔真城×高木⇔見吉]が理想です。男は男、女は女。



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