童貞ロマンチスト

「何だこれ」
 ピンクを主体にしたカラーリングデザインと、その中央で笑顔でポーズを取るやたらキラキラしたモデル、ファッション、コスメ、その他様々な煽り文句が躍り、その中にある1つの見出しが真城の目に飛び込んできた。
 「童貞クンにゲンメツされないための6つの心得!」と言う見出しの女性ファッション誌である。女性ファッション誌など見たことがない、見ようとも思わな い、そもそも興味もない真城であったが、その何とも言えない見出しについ手が伸びた。そもそもどうしてこんなものが仕事場にあるのかと考えたところで、犯 人は見吉しかいない。おおかた置き忘れたのだろう。あいつこんなの読むんだ……とパラパラと薄いページをめくる。
 中身は何の変哲のないファッション関係、新作コスメやブランドのアイテムなどがきらびやかに紙面を埋めている。真城には興味がないものばかりだ。可愛いとは思う。思うが興味がないのは性別や性格の問題で仕方のないことだ。
 ページをめくって行くうちに、気になった見出しの記事を見つけた。ファッション関係のページはきれいなカラーページだったが、その記事はモノクロの地味な ページだった。しかし見出しは表紙のものよりもっと下世話だった。意中の相手が童貞だった場合に気を付けること、「ゲンメツ」されないためのベッドマナー、童貞タイプ別セックステクニックなど、わざわざ図解を載せてまで解説している。真城は少し赤面しながら読み進めるも、その記事の内容に引いていた。
「サイコー、いつものコーヒー売り切れてたから、似たようなやつ買ってきたけど良いよなー?」
 仕事場の扉をガラリと開いて、高木が入ってきた。手には大きめのコンビニの袋を提げている。近くのコンビ二まで飲み物を買いに出掛けていたのだ。真城の身体が反射的にビクリと跳ねて雑誌を隠そうとしたが、その行動もむなしく高木に見付かってしまった。
「何だそれ?」
「た、多分見吉の雑誌」
 ふうん、と興味がなさそうに返事をし、コンビニの袋をテーブルの上に置いた。袋からコーヒー缶を1つ取り出して真城に渡す。渡されたコーヒーを受け取ると、高木が真城の手元を覗き込んできた。眼鏡の向こうの目が大きく見開いている。
「何これ?」
 真城は言葉に詰まってしまった。雑誌は自分のものでないにせよ、こんなページを見ていたのをあまり知られたくなかった。誰でも自分のイメージと言うものがある。そう言うものは極力守りたい。後の祭だが。
 高木は遠慮がちに真城の顔を見ると、手元の雑誌の記事に目を通し始めた。流し読んでいるだけでも、その内容が結構な下世話さを持っていることはわかる。高木は少し眉間にしわを寄せたかと思うと、今度は眉をハの字にして困ったような顔になった。
「女ってこう言うの読むんだ……」
 ぼそりと呟いた言葉に、何だ同じかと真城は思った。多少なりとも「女の子」と言うものに清純性を求めている男としては、あまり見たくない女の部分であっ た。なまじ記事の内容が生々しいので尚更だ。見吉の趣味で定期的に購読しているのか、友達に借りたのかは知らないが、知らなくても良い部分を知ってしまっ た気分だった。高木も同じような気分なのか、真城の顔を見て苦笑いをしている。
「でもこれサイコーには当てはまんな……あっ」
 冗談めかしに言った自分の言葉が失言と知った頃には遅かった。顔を上げた先の真城の目は、蛇のようにじとりと高木を見ていた。内心冷や汗をかきながらどうしようと思案したが、高木がフォローをする前に真城の顔がにやりと意地悪そうな笑顔を描いた。
「ご、ごめんなさい」
「よし」
 真城に何か言われる前に、高木はさっさと白旗を上げてしまった。真城は基本的にこう言う話が苦手なのか、あまりしない。とりあえずの許しを得た高木は、再び真城の手元にある雑誌を覗き込んだ。そこには詳細すぎるベッドテクニックの図解が載っている。
 ふと、一つの記事に目が留まった。記事のテイスト的には変わらないが、その文字は高木の意識に引っ掛かったのだった。やけに真面目に読んでいる高木に不思 議がった真城だったが、そう言う話が好きなのだろうと放って置いた。しかし高木は読みながら徐々に顔を赤くしていく。確かに赤面を誘う記事だが、こう言う 話に免疫がないわけでもない。不思議に思いながら「シュージン?」と呼びかけると、真城に顔を向けた高木は恥ずかしさからか微かに目が潤んでいた。その目 に鼓動が跳ねたが、何食わぬ顔でどうしたのかと聞くと、何度か言い淀んだものの高木が口を開く。
「いや……俺童貞だけど、処女じゃないよなぁって……」
 その言葉に今度は真城が赤面した。することをしておきながら、こんな些細な会話で赤面する自分達が滑稽に思えたが、改めて言葉にするのは恥ずかしいものがあった。互いから顔を背けるように2人で俯いていると、高木が「何か複雑……」と呟いた。
「こ、後悔してる? 俺とこうなったこと」
「しっ、しねーけど……でも」
 でも、と小さく呟いて、真城をチラリと見た。真城も同じタイミングで高木を見て、自然に2人は目を合わせることになってしまった。しばらく赤い顔でお互いを見ていたが、耐えかねたように高木が手で顔を覆ってしまう。
「恥ずかしいのは恥ずかしい! でもサイコーとセックスはしたいから」
「……おまえもっと恥ずかしいこと言ってんぞ」
 全くオブラートに包む気のない高木の言葉に、真城ももっと顔を赤くさせた。恥ずかしさのあまり今日はもうキスもしたくなかったが、そのうち高木の方からね だって来るだろう。高木はあまり我慢がきかない。明日見吉に会ったら雑誌を返して、余計なもの置くなと釘を刺しておこうと真城は誓ったのだった。



エイ秋

 べろり、と唇を舐められた。新妻さんは俺の上に跨りながら 犬のように……と言っては失礼だけど、唇同士をくっつけるわけでもなく、ただただ舌で俺の唇を舐めている。かと思うと、唇を俺のそれに押し付けた。でもそれも短い間だけで、また俺の唇をべろりと舐めた。新妻さんは俺に全面的に体重をかけてはいないが、きっと体重をかけられてもそんなに重くはないだろうと思 う。いつもスウェットに隠れている身体は数えるくらいしか見たことがないが、細いなぁ……と思ったことは覚えている。日頃の食生活はこのマンションのキッチンを見れば一目瞭然だ。同じような生活をすれば多分自分もこうなると思うから何も言わないが、とりあえず最低限の摂取はしているらしいので良しとする。 バランスは悪いと思うけど。
  ぼんやりと考えていると、新妻さんの手が俺のシャツのボタンをプチプチと外し始めた。肌が空気に触れる感覚に軽く身を強張らせていると、唇を舐めていた新妻さんの舌が首筋に到達したらしい。脈に沿って伝うぬめったものに、ぴくりと反応してしまった。
「高木先生、今ピクッてしたですね」
「え、あ、いや……」
 その通りなのだが、何となく言葉に詰まる。と言うか、あまりそう言うことは言わないで欲しい。でもこの程度だったらまだ可愛い方で、俺はこの後の新妻さんにいつも羞恥を煽られてしまうのだ。
 新妻さんの舌は首筋を通り、鎖骨、胸を通った。伝うだけでは飽き足らず、新妻さんはとにかく舐める。新妻さんの舌が通った後は、まるで汗をかきすぎた後のようにテラテラと光を反射する。新妻さんは舐めるのが好きなようだ。そして唾液過剰に舐めるので水音がとても響く。それがとても恥ずかしい。そのいかにも な音に執着は煽られ、耳が犯されるような感覚を覚える。当の新妻さんはそれをわかっているのかいないのか、一度控えて欲しいと言ったらきょとんとしてい た。多分理解してない。
「んっ……!」
 新妻さんの舌が乳首を舐めた。その舌はしつこくしつこく俺の敏感な部分をべろべろと舐め回す。時折ちゅう、と吸ってまた舐める。それの繰り返しだ。声を出さないように必死に堪えるが、その舌に翻弄されてしまう。
「高木先生はここ好きですから、いっぱいしてあげます」
「ん、あ、あっ!」
「あ、ぷくってして来たですね。赤くなって可愛いです」
 新妻さんはそう言うと、また俺の唇を舐めた。でも手は俺の胸から離れず、いつもはペン軸を操る指で乳首を摘んだり押しつぶしたりしている。その感覚にびくびくと身体を震わせてしまい、声も抑えられない。
「顔も、真っ赤で、可愛いです。気持ちいい、です?」
 唇を舐める間を縫って新妻さんが俺に問いかける。俺は答えられないまま、ふるふると頭を振った。それが精一杯だったのだ。胸だけでこんなになってしまう自 分も恥ずかしかったが、それを肯定する言葉も言いづらかったし、代わりの言葉も見付からなかったからだ。新妻さんはそれを否定の態度と取ったのか、不思議 そうに首を傾げると一気に俺のジーンズを下着ごとズリ下げてしまった。驚いて行動を止める暇もなかった。そこをあらわにされると、今俺がどう言う状態か一 目でわかってしまう。
「でも勃ってるですよ?」
 そんなこと言われなくてもわかってる。だって新妻さんに唇を舐められていた時から感じて いたのだから。そんなこと恥ずかしくて絶対に言えないけど。言えないけど、そんなことお構いなしに言葉で求めてくるのが新妻さんなのだ。新妻さんは俺の反 応している部分を握ると、軽く手を上下に動かして扱いた。その刺激に身体は勝手にびくびくと反応し、熱い吐息が漏れる。新妻さんの手が1度ぴたりと止まっ たかと思うと、次の瞬間にはその手は激しく上下を繰り返した。
「あっ、や、新妻さ……っ、あ、あ!」
「高木先生の、ぴくぴくしてて可愛いです……先からとろとろ、いっぱい零れてるです」
 そう言ったと思うと、俺のそれがぬめったものに包まれた。新妻さんが舐めたのだ。
「や、やめっ……あ、あ、ん!」
「舐めても、舐めても、溢れてくるです」
 精液が溢れる場所を舌で抉るように舐められ、俺はもう気が気ではなかった。その箇所から離すように新妻さんの頭を抑えるが、力が入らずその手は添えるだけになってしまう。舌の感覚に俺の腰は絶えずびくびくと跳ねた。
「うあ、あ、あっ! や、そこ、やぁっ……」
「あ、ここ、気持ちいいです? ここも舐めると、高木先生、びくびくして可愛いです」
 くちゅくちゅと新妻さんが俺の精液を舐め取り、ちゅ、ちゅ、と吸う音があたりに響いた。その音に羞恥が湧き上がる。そのいかにもな水音は下半身から絶えず響き渡っていたが、俺の羞恥の原因はそれだけではない。
「もう出そうです? 後ろもひくひくしてますケド、すごく可愛いのでさわりたいです。さわっちゃいます! ……指挿れていいです?」
「んっ、んぁっ……はっ」
「あ、すごいです……中熱いです……あ、そんなに締めないで下さい」
 新妻さんは多分無自覚だと思う。いちいち口に出すのだ。それが俺の羞恥をとても煽る。だって今の俺の状態がどうで、どうなっていて、そう言うことを言われて恥ずかしくないやつなんていないと思う。だからそれに煽られて俺は、感じて、しまうのだ。
「指増やし、ます……中がうねうねして、ますね」
「あ、あっ新妻さ……、ん、ん!」
「高木先生、可愛いです……僕もう挿れたいです、ケド……」
「あ、ん……は、はい……あの、んっ、僕も欲しい、です……」
 俺の言葉に新妻さんが嬉しそうに笑うと、くちゅくちゅと後孔を擦っていた指を引き抜いて、スウェットをずらしてそれを取り出す。それはもうしっかり勃ち上 がっていて、見るのは何度か見ていても赤面してしまう。足を抱え上げられそこをあらわにされると、一層の羞恥が湧き上がる。新妻さんはこうして足を大きく 開かせるのが好きらしい。どこまでも俺は新妻さんに恥ずかしい思いばかりされている。音といい、言葉といい、これといい。
 でもどれも多分天然な のだ。こう言う、プレイ、が好きなわけではないんだと思う。普段から新妻さんの天然っぷりに付き合っている俺が言うのだから、そうに違いない。天然だから タチが悪いとも言えるのだが。それでも惚れた弱みというか、結果的に好きだから何をされても良いと思ってしまう。好きじゃなかったら男に足なんか開かない し、あんなところ舐めさせないし、こんなところにあんなもの挿れさせない。
 新妻さんはいつものようにあまり考えが読めない顔で、でも興奮に高潮 させた顔で俺を見ている。その目つきは男のそれで、俺はぞくりとした。小さく「挿れますね」と呟くと、後孔に先端を押し付ける。熱い塊が俺の中に入ってく るのを感じながら、ああここからがまた恥ずかしいんだ、と考えた。動きながら新妻さんは俺の、いわゆる中の具合の、感想を事細かに述べるのだ。恥ずかし いってもんじゃない。それはもう拷問だ。
 びくびくと震えながら新妻さんのそれを全て飲み込み終えると、新妻さんが視線で訴えてきたので「大丈夫ですよ」と言ってあげた。その言葉に安心したのか、新妻さんがゆるゆると動き始めた。
 ああ、そろそろだ。そろそろ始まる。新妻さんの熱を感じながら、俺は覚悟を決めてその律動に身を任せることにした。文句を言うのは終わってからにしよう……。いつもそう思っても、快楽にのまれてそんな考えすら飛んでしまうことを今度も誓いながら。




反省しなさい

 高木の髪をぐっと掴んだまま、真城は継続を諭した。
 ソファにだらしなく座る真城の下半身に、跪くようにして顔を埋めているのは高木だ。髪を掴んでいる真城は、そこにさらに押し付けるように頭をぐっと押さえ る。高木の苦しそうな声が上がった。真城の性器を口に含んだままの高木は、何も身動きが取れなかった。頭は真城に押さえつけられているし、苦しさに少しで も離れようとするならば即座に真城の叱咤が飛んで来るからだ。喉の奥の奥まで性器を押し込まれ、高木は苦しさでぼろぼろと泣いていた。呼吸もままならない ので意識もだんだん朦朧として来る。辛うじて声は出たが、出来ることと言えば呻くことだけだったので言葉になるには程遠い。ふと、押さえつけている真城の 手が緩んだ。咄嗟に頭を引くと喉を塞いでいた異物感がなくなる。少し咳き込みながら深い呼吸を取り戻し、何度か酸素を取り込んでいると真城の手が高木の髪 を梳いた。その手付きは優しかったが、真城の口から出た言葉はあまり優しくなかった。
「やめろって言ってない」
 高木はその言葉にびくり と肩を震わせると、おずおずと真城の性器を口に含んだ。今度は頭を押さえつけられてはいなかったが、髪を梳く手が優しくて逆に少し怖いと思った。熱を持つ 真城の性器に舌を這わせ裏筋を伝うと、上から真城の吐息が聞こえた。行為の是非はともかくとしても、基本的に高木はこう言った行為は嫌いではない。むしろ 好きな方だ。しかし今回は真城の機嫌があまりにも悪い。何しろ突然髪を掴まれたと思うと頭を押さえつけられ、「口開けろ」と低い温度で言い捨てられたのだ から。
 真城が怒っていることはわかっても、何故怒っているのか高木にはよくわかっていなかった。わかっていなかったが、とにかく怒っているのだから謝っておこうと謝罪を口にしたまでは良かったが、それがかえって気に入らなかったらしい。気が付いたらこの有様である。
 苦しさからは開放されたが、行為をやめる選択肢はないらしい。高木は観念して目の前の行為に集中した。先端にちゅ、とキスをするように口付けそのまま甘く吸うと、自らの口内に性器を迎え入れる。
「ん、んぅっ……」
 先ほどと違い奥までは咥えることは出来ないが、それでも出来るだけ精一杯奥まで咥えた。歯を立てないように気を付けて唇で性器を扱くように愛撫をする。性 器を口から出すと舌先で先端やくびれを愛撫し、また咥える。高木の唾液と真城の先走り液が混じり合い、口からは卑猥な水音が響いた。それを何度か繰り返す うちに真城の吐息が荒くなってきた。髪を梳いていた手はいつの間にか掴むようになり、優しい仕草はなくなっている。意識してのことか無意識なのか、その手 はまた高木の頭を押さえつけるように力を入れていた。高木は少し苦しさを感じて涙ぐんだ。喉に性器を押し付けられていた時に散々ぼろぼろと泣いたので頬に は涙の跡がまだ残っていたが、また新しくぽろりと涙がこぼれてそれを上書きする。
「や……っべ……」
 真城が消え入りそうな声で呟いた。 限界が近いのだ。出すのだろうかと高木は考えて、どうすればいいのだろうと少し迷った。飲んでも良かったが、それは大抵真城が嫌がる(と言うよりも、そこ までしなくていいと言う)のでいつもは出そうになるとティッシュに出していた。しかし周囲にティッシュはないし、取りに行かせてくれそうにもない。真城の 近くにもティッシュはなかったし、取りに行く気配もない。それならば飲むしかないと高木は覚悟を決めた。真城の精液を飲むことは嫌ではないが、どうしても 咳き込んでしまってそれが苦しいのだ。
「んっ、う……!」
 そろそろ近いのか真城の手に力が入った。再び喉の奥まで性器を押し込まれた高 木は苦しさにまたぽろぽろと涙を流してしまう。まるで挿入しているかのように何度も口内を犯されると、真城がぶるりと震えた。来る、と高木がぎゅっと目を 閉じて喉に注がれるであろう精液に備えていると、突然口内から性器が抜かれた。どうしたのだろうかと目を開けると、再び真城に髪を掴まれた。強引に高木の 顔を上に向けさせたと思うと、途端に高木の視界は白に染まった。
「……え?」
 正しくは白濁のものに高木の顔は覆われていた。真城が高木 の顔を目掛けて射精をしたのだ。いわゆる「顔射」である。何をされたのかよくわかっていない高木は、あっけに取られた顔をしている。ただわかるのは、射精 済みの性器は目の前にあって、噎せ返る青臭い臭いが身近にあるということだった。真城は息を整えながら高木の頬に手を添えると、そのまま自分の精液を高木 の顔中に塗りたくった。そこで初めて高木は何をされたのか理解するのだが、頭で理解はしても突然の真城の行動に呆然とするしかなかった。
「うぇ……」
 塗りたくられた精液が臭いを広げる。その独特な生臭さに気分が悪くなり、高木はやはり咳き込んでしまった。塗りたくられた精液を拭おうとしても真城はそれを許さず、達したばかりの性器を再び高木の口に捻じ込んだ。
「んぐっ」
 射精したばかりの性器からは硬さが失われている。しかしまたここから始めろと言うことを、口内に捻じ込んだ性器をさらに捻じ込むことで高木に示したのであ る。高木は本格的に泣きに入っていたが、真城の言うことには逆らえないので性器を吐き出すことも出来ない。満足に咳き込むことも出来ず仕方なく高木は性器 をしゃぶり始めた。涙がぼろぼろとこぼれている上に顔中に精液が塗りたくられていて、さらに咥えているのは男の性器である。高木の顔は酷いものだった。
「苦しい?」
 高木は少し考えた後、控えめに頷いた。
「シュージンさ、さっき俺に謝ったけど、何で怒ってるのかわかんねーままとりあえず謝っただろ。そう言うのムカつく」
 高木はごめん、と言いたかったが、口内の性器が邪魔をしてそれが言葉になることはなかった。もっともそれを言ったところで真城の機嫌が良くなることはなかったので、却ってよかったのかも知れないが。
「口先だけで謝られんのも嫌だから、シュージンの嫌がりそうなことしようと思って」
 どう言う理屈なんだと高木は言いたかった。
「あともしかして期待してるかもしれないけど、今日は俺が抜いたら終わり。抱かないから」
 その言葉に高木の肩がびくりと震えると、今までで一番泣きそうな顔をした。既に泣いてはいたので、一番悲しそうな顔と言ったらいいだろうか。とにかく今日 一番の哀れな表情だった。こんな行為の後には当然ながら肌を合わせるものと思っていた高木の落胆は大きいものだ。それを見越した真城の言葉は彼なりのお仕 置きでもあるらしい。反省が見られないのならば打ちのめすと言う、真城なりの結論だ。真城の性器を舐めながら既に反応を示していた高木は、一人でトイレにでも篭ってするしかないと落胆しながら舌を動かし続けたのだった。

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